Q&A
不眠症と生活習慣について
不眠症とは、次のような症状が見られる病気のことです。
入眠障害:寝ようと思ってもなかなか寝付けない
中途覚醒:眠りが浅くて途中で目が覚める
早朝覚醒:予定よりも早く目が覚めて再入眠できない
熟眠障害:睡眠時間はしっかり確保できているのに熟睡できた感じがしない
単一1つの症状が出現する出ることもあれば、複数の症状が同時に出ることもあります。
不眠症の原因はさまざまです。代表的な原因として次のものが挙げられます。
ストレス
高血圧や心臓病、呼吸器疾患などの病気
うつ病
睡眠時無呼吸症候群
レストレスレッグス症候群
カフェイン
アルコール
喫煙
生活リズムの乱れ
多く不眠症は、「覚醒」させるためのを促す作用働きが「睡眠」を誘導する招く働き作用を上回ることで不眠の症状が起こるのではないかと言われています引き起こされると考えられています。
カフェインの摂取やストレス、飲酒や喫煙、生活リズムの乱れなどが挙げられます。寝る前に強い光を浴びることも不眠の原因です。最近近頃では就寝前にベッドに入ってもスマートフォンを見る方が多く、不眠症になりやすい環境で過ごしている方が多くいます。
慢性的に睡眠がしっかり取れていない状態が続くと、糖尿病や高血圧などの生活習慣病になりやすいと言われています。さらにまた、糖尿病や高血圧が不眠の症状を悪化させることもありるため、これによって悪循環に陥っている方も少なくありません。
不眠症は、質の高い睡眠を取れない状態です。寝ようと思っても寝付けなかったり、途中で何度も起きてしまったりします。一方で睡眠不足とは、単に睡眠時間を十分に確保できていない状態を指すことが一般的です。どちらも集中力や注意力の低下、イライラや肥満、糖尿病や高血圧などを招く原因となるため注意しましょう。
適切な睡眠時間については、個人差があります。一般的に8時間睡眠が良いと言われていますが、あまりこだわり過ぎる必要はありません。平均睡眠時間は10歳代では8~10時間、成人以降から50歳代では6.5~7.5時間、60歳代以上では6時間弱です。通常は年齢を重ねるにつれて睡眠時間は短くなっていきます。ちなみに、死亡率がもっとも低いと言われている睡眠時間は7時間です。
睡眠薬について
睡眠薬には、大きくわけて次の種類があります。
バルビツール酸系睡眠薬
ベンゾジアゼピン系睡眠薬
非ベンゾジアゼピン系睡眠薬
メラトニン受容体作動薬
オレキシン受容体拮抗薬
メラトニン受容体作動薬やオレキシン受容体拮抗薬は比較的新しい睡眠薬です。これらは依存性が少ないため、不眠症の治療ではよく用いられています。
睡眠薬は種類によって効果が持続する時間や働き方が異なります。寝付きが悪いのか、途中で目が覚めてしまうのかなど、その人に合った薬が処方されることが普通です。同じように見える睡眠薬ですが、実は種類によって大きな違いがあります。そのため、友達から貰ったものを使用してはいけません。
睡眠薬は種類によって効果が異なります。超短時間作用型、短時間作用型、中間作用型、長時間作用型と効果が持続する時間が睡眠薬によって違うため、不眠症の症状に合わせて適切なものを使うことが重要です。
睡眠薬と睡眠導入剤は広い意味では同じものです。作用時間が短く、寝付きを良くするために使われる睡眠薬をとくに睡眠導入剤と呼んでいます。安定剤は抗不安薬とも呼ばれており、不安症状の緩和を目的として使う薬です。緊張をやわらげる働きがあることから、安定剤が睡眠薬の代わりに使われることもあります。
市販の睡眠改善薬は、不眠症には効果がありません。睡眠改善薬はあくまでも一時的な寝付きの悪さや眠りの浅さに使う薬です。不眠症のように慢性的な睡眠障害が出ている方には使えないので注意してください。不眠症だと思われる場合は、市販の睡眠改善薬を購入するのではなく、医療機関を受診して適切な治療を受けましょう。
薬を使わずに不眠症の治療をする方法に認知行動療法があります。これは、睡眠に関する考え方や行動パターンを見直すことで睡眠の質を上げる治療法です。睡眠に対して正しい知識を得ることで、質の高い睡眠を取れるようにします。
お酒に頼るのはおすすめできません。アルコールには催眠作用があるため寝付きはよくなりますが、深い睡眠を取ることが難しくなることから熟睡感を得にくくなります。「長く寝たはずなのに寝た気がしない」といったことになるため、お酒に頼って寝ようとするのは控えましょう。
そのようなことは決してありません。睡眠薬なしでもしっかり眠れるようになれば、服用を止めることができます。ただし、十分な睡眠を取れるようになったからといって自己判断で睡眠薬の服用を中止するのは避けてください。かえって不眠の症状が悪化することがあります。医師と相談しながら服用量を調節しましょう。
服用方法について
睡眠薬は寝る直前に服用することが基本です。ベッドや布団に入る直前に服用しましょう。服用してからお風呂に入ったりご飯を食べたりすると、効果が弱まったり寝るタイミングを見失ったりして寝られなくなる恐れがあります。また、早く服用しすぎるとふらつきが起きて転倒することもあるため、必ず寝る直前に服用してください。
眠れないときだけ使用できる睡眠薬もあります。時々しか睡眠薬が必要ない方は、眠れないときだけ使う薬を処方してもらいましょう。しかし、薬の種類によっては眠れないときだけ服用すると、服用しないときに症状が悪化する場合があります。頓用に向かない睡眠薬もありますので、医師に相談してから使用タイミングを決めてください。
睡眠薬なしでも眠れそうな日は無理に服用する必要はありません。そのため、体調に合わせて飲む日と飲まない日を決めても大丈夫です。ただし、睡眠薬の種類によっては、飲んだり飲まなかったりすることで症状が悪化するものもあります。自己判断で服用の有無を決めず、医師に相談してから服用方法を決めるようにしましょう。
途中で起床してしまった場合でも、追加でもう一錠飲むのは控えてください。薬が効きすぎて翌朝まで眠気が持ち越してしまい、日常生活に支障が出る恐れがあります。薬を服用していても途中で目が覚めてしまうことが続いている場合は、睡眠薬が合っていない可能性があるため、医師に相談してください。
睡眠薬の粉砕は控えてください。粉砕することで安全性や有効性が変化したり、苦味が強く出たりする恐れがあります。粉砕せず、錠剤のまま服用してください。どうしても錠剤だと飲みにくい場合は、医師や薬剤師に相談しましょう。
睡眠薬の種類によっては、長期間にわたって服用することで依存性が形成されることがあります。服用を止めようと思っても止められなかったり、服用しないと眠れなくなったりしてしまうのです。依存性が形成されにくい睡眠薬もありますので、心配な方は医師に相談してみてください。
睡眠薬をほかのものに変えたいときは、まず医師に相談してください。睡眠薬の種類によっては、少しずつ減量して止める必要があるものもあります。自己判断でほかの睡眠薬に変えるとかえって眠れなくなることもあるため注意してください。なお、ほかの薬に乗り換えたい場合は、「飲んでも効果がなかった」「眠気が翌朝まで残るのが気になる」など、具体的な理由を医師に相談すると、自分に合う薬が見つかりやすくなります。
副作用について
睡眠薬の副作用が特別に怖いものが多いということはありません。どのような薬にも副作用が存在する可能性はありますので、過度な心配はせず医師の指示に従って服用しましょう。近頃では依存性が少ない睡眠薬も出てきています。必要以上に副作用を恐れず、医師とよく相談して自分に合う睡眠薬を見つけることが大切です。
睡眠薬で副作用が起こる確率は、薬の種類によって異なります。たとえば、リスミーという睡眠薬では次のような割合で副作用が起こることが報告されています。
〈0.1~2%〉
眠気、ふらつき、頭重感、めまい、頭痛、口渇など
〈0.1%未満〉
頭がぼんやりする、イライラ感、動悸、不整脈など
副作用が気になる場合は、医師と相談して自分に合う睡眠薬を処方してもらいましょう。
気になる副作用が表れた場合は、医師や薬剤師に相談してください。症状によっては継続服用が向かないケースもあります。適切なアドバイスを医師や薬剤師から貰い、うまく対処しましょう。なお、副作用かどうか判断できない場合でも相談して構いません。悩んだときは早めに相談することが大切です。
睡眠薬の種類によっては、寝ているときだけでなく翌朝まで眠気が持続することがあります。この場合は睡眠薬の種類が適していないと考えられますので、医師に相談して別の種類の睡眠薬を使うことを検討してみましょう。日中の眠気以外に、だるさや集中力の低下、ふらつきなどが出ている場合も睡眠薬が合っていない恐れがあるため、医師に相談することをおすすめします。
睡眠薬がアルツハイマー病のリスクとなるかについては、関係性がまだはっきりしていないのが現状です。フランスで行われたある調査では睡眠薬を服用していた高齢者では服用していなかった高齢者と比べて認知症のリスクが1.5倍高くなっていました。しかし、睡眠薬と認知症にはリスクに相関性がないとする研究もあります。
不眠症の診療について
次の場合は、受診して治療を受けるようにしましょう。
• 睡眠による不調が1か月以上続いている
• 睡眠による不調が続いているのは1か月以内だが、日常生活に著しく支障を来たしている
不眠症を放っておくと、学校生活や社会生活に影響が出ることが少なくありません。集中力や注意力が低下し、大きな事故につながることもあるでしょう。そのため、上記に該当する場合は早めに受診するようにしてください。
眠れない症状が気になって受診するときは、以下のことを医師に伝えるとよいでしょう。
• いつから症状が出ているのか
• どのような症状に悩んでいるのか、日常生活に何か支障はあるか
• ほかに困っている症状はあるか
• 眠れない症状が出ることで生活にどのような変化があったか
• 普段の起床時刻と就寝時刻

デエビゴについて
成人の場合は、レンボレキサントとして1日1回5mgを寝る直前に服用してください。なお、用量は症状に合わせて適宜増減します。1日2.5~10mgの範囲で調節できますが、1日10mgを超えて服用することはできません。
食後すぐに服用すると、デエビゴの効果が出るまでに時間がかかる恐れがあります。そのため、服用したのに眠気がしばらく来ないこともあるでしょう。効果を十分に出すためにも、デエビゴを服用する際は食後を避けて寝る直前に使用してください。
効果がない場合は量を増やすこともできます。通常は1日1回5mgを服用しますが、1日最大10mgまで増量可能です。ただし、自己判断で増量せずに医師に必ず相談してください。逆によく効く場合には1回2.5mgまで減量できます。この場合も医師に相談するようにしましょう。
とくに併用禁忌となっている薬はありません。併用禁忌となっている薬はないので安心してください。デエビゴは薬を代謝する酵素であるCYP3Aの影響を受けにくいことが特徴です。一部の薬は飲み合わせに注意が必要ですが、併用してはいけない薬はありません。
デエビゴの依存性が低いのは、GABA受容体に働きかけないためです。依存性が高い睡眠薬は、GABA受容体に作用して脳の活動を抑える働きがあります。デエビゴは覚醒に関わるオレキシン受容体をブロックすることで体を睡眠状態に切り替える睡眠薬です。
デエビゴを長期に服用しても耐性が生じることはないと考えられています。デエビゴの効果の持続性について調べた研究では、投与3か月、6か月、9か月、12か月時と投与1か月時を比較しても効果の減弱は見られませんでした。
デエビゴの副作用として代表的なのは、傾眠や頭痛、倦怠感です。このほか、悪夢やめまいなども報告されています。副作用が出にくく使いやすい睡眠薬と言われていますが、副作用が気になる場合は用量を減らしたりほかの睡眠薬に変えたりして様子を見てみましょう。

ロゼレムについて
就寝する前に服用してください。ロゼレムは、体内時計のリズムを整えるメラトニンというホルモンに働きかけることで眠気を促す薬です。体内でもメラトニンは分泌されており、通常は夜に分泌量が増加します。そのため、服用するタイミングも寝る前がベストなのです。
効果がない、もしくはよく効くからといって量を自己判断で増やしたり減らしたりすることはできません。ロゼレムの服用量は、1回8mgと決まっています。薬が合わないと感じるときは、ほかの薬に変更することも視野に入れて医師に相談してください。
併用できない薬として、抗うつ薬のフルボキサミンマレイン酸塩があります。併用することでロゼレムの効果が強く出る恐れがあるためです。このほか、キノロン系抗菌薬やフルコナゾール、リファンピシンなどでは併用に注意が必要となります。ロゼレムの効果が減弱したり増強したりする恐れがあるため、これらの薬と併用する場合はロゼレムの効果の変動に注意しましょう。
ロゼレムの依存性は極めて少ないと言われています。依存性が高いとされる睡眠薬の多くはGABA系に働きかける薬です。ロゼレムはGABA系ではなくメラトニンに作用するため、依存性はほとんど出ません。依存性が少なく、それでいて睡眠リズムを整える働きがあるため使いやすい薬と言えるでしょう。
ロゼレムを長期間にわたって使用しても、耐性が生じることはありません。国内で行われた長期投与試験において慢性不眠症患者を対象にロゼレムを24週間投与したところ、効果の持続が確認されました。そのため、長期間使用する場合でも効果の減弱を気にすることなく服用できます。
ロゼレムの代表的な副作用は、めまい、頭痛、眠気などです。とくに眠気の副作用は出やすく、翌朝に眠気が残ってしまうことがあります。このほか、悪夢やプロラクチン上昇なども報告されていますが、夢を見る頻度が増えるという副作用はあまり報告されていません。

ルネスタについて
寝る直前に服用します。就寝した後に再び起きて活動する予定がある場合はルネスタを服用しないでください。また、ルネスタは食事の影響によって効きにくくなることがわかっています。そのため、食後の服用は避けて空腹時に服用してください。
個人差はありますが、服用後30分から1時間ほどで効果が出ます。そのため、使用するときは寝る直前に服用してください。血中濃度は約1時間でピークに達します。半減期は約5時間です。5時間ほど経つと徐々に血中濃度が低下していきます。
ルネスタは1回1~3mgの間で量を調節できます。効果がない場合は最大3mgまで増量が可能です。ただし高齢者では2mgまでしか増量できません。薬が効きすぎるときは1mgまで減量できます。増量や減量するときは自己判断で行わず、医師に相談してから行うようにしてください。
依存性はほとんどないと考えられます。依存性調査表を用いてルネスタを長期投与した場合の依存性について調べたところ、明らかな精神依存や身体依存は見られませんでした。ただし、常用量依存といって、用法用量を守っていたにもかかわらず減薬や断薬したときに軽い依存を生じる可能性があります。常用量依存を避けるためには、漫然と長期間にわたり使用するのを避け、決められた量を短期間で使うことが大切です。
ルネスタには耐性がほとんどないと考えられています。長期間にわたる服用で耐性がつくかどうかを調べた試験では、耐性の形成は確認されませんでした。12か月連続で使用しても耐性がつかなかったという報告もあります。
一般的な副作用としては、傾眠や口内に残る苦味があります。これらは服用者の約3%以上に見られる症状です。ルネスタを服用すると苦味が翌日まで残ることがあるため、気になる方は医師に相談してほかの薬に変えてもらうことも検討しましょう。このほか、頭痛やめまい、口の渇きなどの副作用も報告されています。

リスミーについて
不眠症に使う場合は、寝る直前に服用してください。リスミーの効果がピークに達するまでには約3時間かかります。ただし、これは「3時間経たないと眠くならない」というわけではありません。服用後15~30分程度で眠くなってきますので、寝る直前に服用するようにします。
リスミーの効果は、服用してから15~30分程度で表れます。比較的早く効果が表れる睡眠薬です。なお、効果がピークに達するまでには約3時間かかります。体内で代謝されると、リスミーは4つの活性代謝物になってそれぞれが作用することが特徴です。穏やかに効果を発揮しながら睡眠時間の全体をカバーします。
リスミーは1回1~2mgで服用量を調節できます。1mgを服用しても効果が十分でない場合は量を増やすことも可能です。また、2mgで効きすぎるときは1mgに減量できます。ただし、いずれの場合も自己判断で減量や増量をするのは避けてください。医師の指示に従って用法用量を守り服用しましょう。量が合わないと感じるときは医師に相談して量を調節してもらうか、ほかの薬に変更してもらうようにします。
リスミーの作用はそこまで強くないため、高い依存性はありません。「服薬体験」「耐薬性」「用量増加」「継続使用欲求」についての評価では、いずれも強い精神依存や身体依存を形成しないことがわかっています。ただし、リスミーを漫然と使用するのは避けてください。常用量依存といって、リスミーがないと睡眠が不安定になってしまうことがあります。
リスミーを長期間にわたって使用すると、耐性を生じることがあります。お薬がある状態に体が慣れ、同じ量を服用しても効かなくなってしまうことがあるのです。リスミーは短時間型に分類されるベンゾジアゼピン系の薬として知られています。ベンゾジアゼピン系は使い続けると体が慣れてしまうため、どうしても耐性を生じてしまうのです。
リスミーの副作用として代表的なのは、眠気やふらつき、めまいや頭痛などです。このほか、頭がぼんやりする、妄想、動悸、むくみなどの副作用も報告されています。軽度の筋弛緩作用があるため、ふらつきが出ることもあるでしょう。ただし、安全性は比較的高い薬だと言われています。長期間にわたって服用すると依存することがあるため、急に服用を止めず医師の指示に従って減量することが大切です。
監修医師Introduction to Specialists
私たちが相談・診察・処方を担当します。
精神科医/産業医
河野 敬明

精神科医/産業医として、首都圏の大学病院/精神科病院/総合病院/クリニック/嘱託産業医としての勤務を経て、2024年「心と眠りのクリニック中野」を開業。
専門資格日本精神神経学会専門医・指導医
精神保健指定医
日本医師会認定産業医
日本老年精神医学会専門医
医学博士 M.D.,Ph.D.